フケとは
フケとは角質が頭皮からはげれ落ちたモノのことをいいます。
ただ、角質が頭皮からはがれ落ちること自体はすべての人で起きていることで、何も珍しいことではありません。
フケが出ている頭皮と出ていない頭皮との違いは、頭皮から落ちる角質が塊で落ちるのか、1枚で落ちるのかということです。
角質が大量に目に見えるくらいの大きさの塊になって落ちるものを”フケ”といいます。
反対に、1枚ずつ落ちる角質は、頭皮の新陳代謝が正常に行われているときの落ち方で、とても小さく目で見ることは出来ず、何も落ちているようには見えません。
1枚で落ちる角質が正常なら、塊で落ちる角質は異常なのでしょうか?
皮膚は何十層もの細胞の重なりで出来ていて、一番下の層で生まれた細胞はどんどん成長(分化)して、表層に至るときには角質というとても丈夫な細胞になり、強力なバリア層を作って体を守っています。
このバリア層が何かの原因で壊れると、その原因の物質を細胞ごと排除しようとして新しい細胞をどんどん作ります。その時に作られる細胞は未熟な角質で、この大量に作られた未熟な角質がいろいろな理由で塊として剥がれた時にフケになります。
※現在、フケは脂漏性皮膚炎の軽度のもので通常は炎症を伴わないものと見なされています。しかし落ちたフケを観察すると、正常な角質では消滅しているはずの細胞核を持ったままの未熟な有核細胞が含まれています。この有核細胞は炎症によって増殖が盛んになった結果生じるものなので、フケの出ている頭皮には、目に見えないレベルの炎症は少なからず起きていると思われます。
フケ発生の原因と経緯
角質の塊が皮膚上で確認できるものを鱗屑、それが剥がれ落ちることを落屑といいます。鱗屑、落屑が起きることを広くフケ症と呼びますが乾癬・脂漏性皮膚炎・アトピーなどが原因の頭部湿疹・白癬などの疾患によっても鱗屑・落屑は起こります。ここでは特別な疾患ではない状態で発生するフケの起こり方をみてみます。
フケは、皮脂分を多く含む大き目でベタッとした湿ったフケ「湿生フケ」と、細かくパラパラと落ちる乾燥したフケ「乾性フケ」の2種類に分けられます。
「湿性フケ」と「乾性フケ」、発生する仕組みはまだ全て解っているわけではありませんが、それぞれの発生する主に知られている原因と経緯は以下のようになります。
「湿性フケ」
湿性フケは、皮脂の分泌量が多い状態で、現在の段階では脂漏性皮膚炎の手前の症状と考えられています。
また、脂漏性皮膚炎と同じように常在菌のマラセチアが関係していると考えられています。
経緯
湿性フケが発生するまでの大まかな経緯です。
皮脂の主要成分であるトリグリセリドという物質を、皮膚に常在している微生物のマラセチア菌が代謝し、リパーゼという酵素を出します。リパーゼはトリグリセリドを遊離脂肪酸とグリセリンに分解します。
このとき皮脂の分泌が通常の量であれば、分解されたグリセリンは保湿剤として、また脂肪酸も分解されてから24時間以内の新鮮なときは頭皮を弱酸性に保
つ働きをします。
湿性のフケが発生するケースでは、
- 皮脂の分泌量が多い
- 洗浄の回数が少ないため古くなった皮脂が取り除かれない
などの理由により、頭皮に皮脂が蓄積されていきます。
頭皮上に皮脂=トリグリセリドが多量にあると、それを代謝するマラセチア菌
が大量に増えます。大量に増えたマラセチア菌は多量のリパーゼを産生するた
め、結果として遊離脂肪酸も過剰に産生されてしまいます。
大量に増えたマラセチア菌は、異物を感じ取るセンサー(この時はToll様受容体
というタンパク質:TLR)が異常を感じ取り、炎症を引き起こす物質(ここでは
IL-1α、IL-6などの炎症性サイトカイン)が分泌され、炎症を引き起こします。
同時に、大量の遊離脂肪酸も自然免疫系を刺激し炎症を起こします。
また洗髪などが少なく、頭皮に残っていた遊離脂肪酸が古くなると、脂肪酸が過酸化脂質に変化してさらに刺激性が増し炎症が強化されてしまいます。
皮膚は炎症が起きると表皮細胞ごと、侵入した異物(体にとっての毒物や微生
物)を排出しようとします。
そのために表皮内では細胞成長因子(ホルモンなどの一種)の分泌が盛んにな
り、ターンオーバーのスピードが速まります。結果、細胞もどんどん増殖されま
す。
※ターンオーバー:表皮内で細胞が生まれ→角質に成長し→剥がれ落ちるまでの
サイクルのことを言います。健常な20代で約4週間前後と言われ、一般的に年齢
が増すとターンオーバーのサイクルも長くなります。
ターンオーバーが速まり、短時間で作られた角質は分化が十分に進まないため、
成熟できない未熟なままの角質が大量に作られます。
大量に作られた未熟な角質は頭皮上に厚く積み上がります。
未熟な角質では
- 角質の強度が極めて弱い
- 水分を保持する能力が低い
(表面は皮脂が覆っていても、その下の角層自体が乾燥してしまいます) - 微生物などが繁殖しづらい弱酸性の環境を保てず、中性~アルカリ性に傾くなど、通常の角質と比べるととても機能が劣ります。
このとき、
ア. 強度の弱い角質の堆積では、角質と角質の繋がりもとても弱く、剥がれ落ちやすい状態にあります。
イ. 通常、健康な角層では角質と角質はとても強力に接着されています。この接着をタンパク分解酵素が溶かし角質は1枚ずつ脱落するのですが、この酵素は水分が不足すると働きづらくなります。
ウ. タンパク分解酵素には酸性とアルカリ性それぞれで働くものがあります。角層のpH(ペーハー)は中性から表面に向かって徐々に弱酸性に変化していくので、その場所ごとの角層のpHに合わせた酵素が働き徐々に剥離が進みます。
しかし、頭皮のpHが中性~アルカリ性に傾くことにより、タンパク分解酵素の働きが不安定になります。
5のような状態では水分不足やpHの変化など、剥がれやすい条件と剥がれづら
くなる条件とが入り交じることでタンパク分解酵素の働きが乱れます。
もともと繋がりの脆い状態で積み重なっていた角質は、その乱れたタンパク分解
酵素の作用のせいで不規則かつ連続的に塊となって剥がれ落ちます。
さらに湿性フケの場合、皮脂の多い頭皮で湿った角質が互いに癒着することに
より一般的に乾燥フケより大きな塊のフケが発生しやすくなります。